会議のメモを作ったのに誰も読まない。Meet の録画が個人のマイドライブにたまる。問い合わせを読んで台帳に転記する。こうした「アプリとアプリの間」に残る手作業を、Google Workspace の中でつなげるのが Google Workspace Studio です。プログラムを書かなくても、「メールが届いたら」「会議のメモができたら」「フォルダにファイルが追加されたら」をきっかけに、Gemini で内容を判断したり、ファイルを移したり、台帳に書き込んだりできます。
この記事では、Studio の仕組みと、最初に作るとよい流れ、全社に広げる前に決めることを説明します。Studio は速いペースで更新されていて、公式のヘルプに載っていても自社の画面にまだ出ていない機能があります。必ず自社のアカウントの画面で確かめてから使います。
仕組み: 1つの開始条件と、その後ろのステップ
Studio の「フロー」は、1つの開始条件と、その後ろに並べる1つ以上のステップでできています。たとえば「指定したフォルダにファイルが追加されたとき」が開始条件で、そのあとに「ファイルを共有ドライブへ移動」「Chat で自分に知らせる」と並べます。前のステップで受け取ったファイル名やリンクは、変数として次のステップに渡せます。
Gemini に相談して文章を返してもらうだけでなく、その結果で分けて、Google Workspace の上の仕事を進められるのが違いです。向いているのは、毎回ほぼ同じ順番で起きる小さな受け渡しです。最初は「受け取る → 判断する → 下書きする」の3段階から始めます。
開始条件の種類
- 時間と手動: 設定したスケジュールで実行・手動で開始(手動では入力欄を作り、その入力を後ろのステップに渡せます)
- メール: メールの受信時(送信者・件名・本文・添付ファイルを後ろに渡せます)
- Chat: スペースへの参加・メッセージの受信・自分のメンション・絵文字のリアクション
- ドライブとスプレッドシート: シートの変更・フォルダへの追加・ファイルの編集
- 会議とフォーム: 会議の出力の準備ができたとき(文字起こしか Gemini のメモ)・フォームの回答
「会議の出力」は、録画の動画そのものを指す開始条件ではありません。録画を扱うときは、録画が保存されるフォルダを監視します。
ステップの種類
- AI: Gemini に相談・Gem に質問・Gemini で作成・Deep Research・未読メールを要約・抽出・決定・要約
- 流れの制御: 条件分岐・フィルタ・繰り返し
- Gemini Notebook: ソースを追加・質問
- Gmail: 通知・送信・下書き・返信の下書き・ラベル・既読と未読・スター・転送など
- そのほか: Chat への投稿、スプレッドシートの行の追加と更新、ドライブの添付の保存とフォルダの作成と移動、カレンダー、ドキュメント、ToDo
外部のサービスとの連携のように、ベータとして案内されている機能もあります。組織の契約や管理者の設定で見える機能が変わるので、「公式に書いてあるから明日から全員使える」とは考えず、自社の画面と承認の決まりを先に確かめます。
例1: 会議のメモを Gemini Notebook に集める
会議のたびに Gemini のメモが作られても、読まれないままドライブに残ります。「Gemini Notebook にソースを追加」のステップを使うと、決定事項や過去の経緯を1つのノートブックに集め、「前回までに何が決まったか」をあとから質問できます。
会議ごとに新しくできるメモを、毎回自動で追加できるかは、環境によって確かめる必要があります。まずテスト用の会議で1件動かし、会議の出力のどの変数が使えるか、ドライブのリンクとテキストのどちらで渡せるかを確かめます。決まった資料を定期的に追加する使い方なら、設定しやすくなります。
例2: マイドライブにできたファイルを、共有ドライブへ移す
Meet の録画や Gemini で作ったドキュメントは、まずマイドライブに作られるものがあります。会社の情報なのに個人の場所にたまり、退職や異動のたびに所在を確かめることになります。「フォルダにアイテムが追加されたとき」で受け皿のフォルダを監視し、「ファイルまたはフォルダを移動」で指定した共有ドライブへ移す流れを作れます。
共有ドライブに移すと、保存場所だけでなく、見られる人やファイルの扱いも変わります。移動のように影響の大きい操作は、組織のポリシーに応じて実行の前に承認を求められます。いきなり本番のフォルダで使わず、テスト用のファイルで承認の出方まで確かめます。
テスト実行は、本物の操作を実行する
Studio の「テスト実行」は、画面だけの模擬ではありません。実際のデータでフローを1回動かし、メールの送信・Chat への投稿・ファイルの移動・会議の作成なども実行されます。最初は次の3つを決まりにします。
- テスト用のフォルダと、自分宛ての通知だけで組む
- メールは送信ではなく、下書きで止める
- ファイルの移動は、消してよいダミーのファイルで試す
上限
公式のヘルプでは、作れるフローは最大25個(オンかどうかに関係なく数えます)、Gmail のイベントで始まる有効なフローは25個まで、1つのフローのステップは最大20個とされています。1日に実行できる回数の上限もあります。長い1本に詰め込むより、目的ごとに短く分けたほうが、上限にも保守にも強くなります。
全社に広げる前に決めること
- フローの持ち主・対象のデータ・実行したあとの保存先を記録する
- 外部への送信や共有の範囲が変わる処理で、どの承認が出るかをテストする
- 失敗したときに人が気づける通知か、確かめる手順を付ける
最初に作る流れの具体例は、Google Workspace Studio で最初に作る自動化3つ(毎朝の未読のまとめ・自分の決裁が要るメール・請求書の添付の保存)で説明しています。
